大人のためのおはなし会 第25回 2019年9月
2019年9月20日(金)は、二子玉川ボランティアビューローで「大人のためのおはなし会 第25回」が開催されました。
穏やかに晴れたお天気の中、11名のお客様がお見えになりました。なんと静岡の三島からお出でになった方もいらして、本当に嬉しく思いました。
今回のマイヤース景子先生のお話しは、今日はお彼岸の入りの日ですので、お彼岸に関するお話しでした。
三途の川をはさんで、向こう側の世界を「彼岸」、こちら側の世界を「此岸」と言うそうです。「彼岸」は西に「此岸」は東に位置しています。そして春分と秋分の日は、太陽が真東から昇り、真西に沈み、「彼岸」と「此岸」の時間と距離が一番短くなると言われています。お彼岸の時期に咲く彼岸花は、根の部分に毒があるので、昔は土葬であった為にネズミやモグラを排除するため、墓地にたくさん彼岸花が植えられたようです。その理由を知らない為に、現代の人々は彼岸花を「不吉な花」等と言いますが、彼岸花は別名「曼珠沙華」と言い、「マンジュシュリ」とは、サンスクリット語で観音様のことで、本当はありがたいお花であるということです。有名な「般若心経」の「波羅蜜多」とは、迷いの多い此岸から「彼岸」(悟り)の世界に至るという意味があるそうです。マイヤース景子先生がネパールで購入された「マンジュシュリ」の像を見せてくれました。「マンジュシュリ」は、インド・ネパールに108体あるそうで、その108体の木版画の大きなご本も見せてくれましたが、美しい布に巻かれていて、大変貴重なご本でした。お彼岸の事もよく分かり、おはなしの部屋に仏様の後光が差しこんできたような心持になったところで、最初の「おはなし」が始まりました。
「あめは毒」は、和尚さんがあめを独り占めしたい一心で「子どもには毒だ」と小僧さんに言うのですが、小僧さんはそれを逆手にとって首尾よく全部なめてしまったというおはなし。小僧さんの頭の良さにすっかり脱帽してしまいました!
「夢見小僧」は、親方に「夢の話をしろ」と言われても絶対にしなかった灰坊は追い出され、道中カッパにもらった「生き針」と「死に針」で、上手く長者の娘さん2人を生き返らせ、そのうちの1人と結婚して幸せに暮らしたというおはなし。いい夢は、これからは絶対に話さないようにしようと、思わず心に誓ってしまいました!
「魚と指輪」は、人の運勢を占える男爵が自分の息子を占ったら、なんと大変貧しい家に生まれたばかりの女の子と結婚すると出たので、その家に行き、女の子を川に流すも、その子は生き延び美しい娘に成長したところで、偶然また会ってしまいます。その後どんなに手を尽くしても、結局その娘さんと会うことになるので、最後には運命には逆らえないという考えに至って、その後はみんなで幸せに暮らすというおはなし。人間の不思議な運命に思いを馳せて、聞きごたえのある感慨深いおはなしでした。
「風の神と子ども」は、南風に、何人かの子供たちが山に連れてってもらい、一緒に梨や柿等食べて遊んでいたら、急に南風はどこかに行ってしまい、子ども達は途方に暮れていると、風のお母さんが助けてくれて、今度は息子の北風に、子どもたちを家まで送らせてあげるというおはなし。南風も、悪気があってやったことではないし、風のお母さんもとても優しいし、何とも心温まる日本のおはなしでした。
「猫檀家」は、日本の有名なおはなしで、山寺の「眠りかけ和尚さん」が飼っていた猫が、夜な夜な和尚さんの袈裟を借りて、猫たちを集めて一生懸命お経を読んでいたのが、ある時とうとう和尚さんにばれると、猫は「ばれてしまってはここにいられないが、恩返しをしたい」と言って、和尚さんに話した通りのことを和尚さんがすると、すべて上手くいき、廃れていた山寺も綺麗になって、和尚さんは幸せに暮らしたというおはなし。猫のお経をあげるシーンが何ともユーモラスで、飄々としている和尚さんも目に浮かぶような、ほっこりとしたおはなしでした。
「心臓がからだの中にない巨人」は、ノルウェーのおはなし。7人兄弟の末の王子は、いつもボーっとしていて利口でないと思われていたのに、6人の兄たちが巨人に石に替えられて城に戻ってこないと、助けにいく為に旅に出ます。お姫さまや、途中で助けてあげた動物たちの支援を受けて、巨人の心臓を見つけ出し、退治することもでき、兄たちとそのお嫁さんも連れて帰って、自分も1番美しいお嫁さんをもらい、幸せに暮らしたという、長編の冒険活劇のように楽しいおはなしでした!
今回も、無事に楽しくおはなし会を終えることが出来ました。これからも、楽しいおはなし、ホロッとするおはなし等、様々なおはなしを皆様にお届けできるように、おはなしたまごの会一同、精進してまいりますので、また、聞きにいらしてくださいね! 首を長くして、お待ちしております!
☆プログラム☆
あめは毒(「和尚と小僧」から) -日本の昔話-
「子どもに語る日本の昔話 2」 稲田和子・筒井悦子著 こぐま社
夢見小僧 -日本の昔話-
「子どもに語る日本の昔話 1」 稲田和子・筒井悦子著 こぐま社
魚と指輪 -イギリスの昔話-
「子どもに語るイギリスの昔話」 松岡享子編・訳 こぐま社
-休憩-
風の神と子ども -日本の昔話-
「おはなしのろうそく9」 稲田和子再話 東京子ども図書館
猫檀家 -日本の昔話-
「瓜子姫とあまのじゃく」日本の昔話3
松谷みよ子作 ささめやゆき絵 講談社(青い鳥文庫)
心臓がからだの中にない巨人 -ノルウェーの昔話-
「おはなしのろうそく22」 松岡享子訳・編 東京子ども図書館