中央図書館 大人のためのおはなし会 第30回 2020年 2月
2020年2月21日(金)は、世田谷区立中央図書館で大人のためのおはなし会でした。
まるで春のような暖かい日差しの中、19人の方がいらしてくださいました。
マイヤース景子先生の始まりのお話しは、今日のテーマ「夜-暗闇と明るさと-」に関するお話でした。先生が、以前、5400mのエベレストのベースキャンプに行った時に見た夜の漆黒の闇と満点の星空の景色は、それはそれは素晴らしかったとのことです。
アメリカと日本のハーフであるイサム・ノグチ氏はアメリカと日本両方の文化を知っていると同時に、両方の差別も受けたということでした。戦時中、自ら進んで日系収容所に入っていたこともあったそうです。その後、ようやく建築の世界で活躍していくことになるのですが、今でこそ良く見る障子紙を張った行燈のような照明器具『AKARI』は、まさにこの人の日本とアメリカの文化を融合したものから生まれたと言えます。対立ではなく、平和の『明かり』を灯してくれた素晴らしい作品です。
今日は、ろうそく(電気で点灯する)の暖かい光を先生が灯してから、おはなし会が始まりました。
最初のおはなし「ニョキニョキの話」は、部屋の四隅に1人ずついて、そこから「はぁ~ニョキニョキ」と言いながら部屋の中央まで行くと化け物が出てくるというそうだからやってみようと4人の男たちがやってみます。部屋の中央まで来た時、出てきたものは...?怖さと面白さの両方を味わえる1粒で2度おいしいおはなしです。
「宝化け物」は、化け物が出ると言われているお屋敷に泊まったお侍さん。夜になって出てきたユーモラスな化け物を捕まえて事情を聴いてみると...?意外な答えに誰もが幸せな気分になる、ほっこりと心も温まるおはなしでした。
「妖精の丘が燃えている」は、アイルランドの、1軒しか家がない島で、旦那さんと息子が漁に出て天候が悪くなり家に戻れなくなった為その夜はおかみさん1人しか家にいないということになり、心細い思いをしていると3人の醜いおばあさん妖精が家に入ってきて、仕事を手伝うから夜食を作れと言います。おかみさんは、機転を利かせて家を出ると、井戸のところで亡くなったお母さんの霊がこの場を切り抜けるうまい方法を教えてくれます。その方法とは?亡くなった後も娘を気遣う母親の深い愛情と、怖いけどどこかユーモラスな妖精の、不思議で聞き応えのあるおはなしでした。
「明かりをくれ!」は、7人の子どもを持つ貧しいお母さんが幽霊が出ると言われている大きな古いお屋敷に、行き倒れて死ぬよりはと、子ども達と一緒に泊まることにしました。夜になると、ものすごい音がして、その後に「明かりをくれ~!」という苦しげなうめき声が...!お母さんは暖炉で燃えているまきを長男に持たせて「明かりを持って行ってあげなさい」と言います。子供たちが勇気を振り絞って行ってみると...!お母さんの気持ちと子どもたちの勇気、幽霊の事情が見事に融合して、後味のいいおはなしでした。
「古屋のもる」は、おじいさんとおばあさんの家に忍び込んで馬をいただこうと思っていたとらおおかみ。おじいさんとおばあさんの話しを聞いて「古屋のもる」という恐ろしいものがいると勘違いしてしまいます。逃げ出そうとしたところに馬泥棒が入ってきて、とらおおかみを馬と勘違いしていきなり後ろからとびつきますと、とらおおかみは古屋のもるに取りつかれたと思って大慌てで逃げ出し、古井戸にこすり落として仲間のいるところまで逃げます。仲間と一緒にもう一度古井戸まで行ってみると...?なぜお猿さんの頭とおしりが赤くなってしっぽも短くなったかと言うことまで分かってしまうとても面白いおはなしでした。
「黒いお姫さま」は、悪魔の呪いのせいで15歳になった途端死んで真っ黒になってしまった美しいお姫さま。1度も悪いことをしたことがない人がお姫様の棺の番をすると、呪いがとけるというので、何人もの人が番をしましたが、みんな黒いお姫さまに殺されてしまいます。羊飼いのヤーコプが番をすると...?12時の鐘が鳴ってから1時の鐘が鳴るまでの間の緊迫感でホラー映画のようなドキドキ感が味わえるおはなしでした。
「かごにはいった夜」では、貧しく、両親も亡くなってしまった1人の少女が、おばあさんからもらった黒猫と一緒に暮らしていたのですが、ある青年と親しくなると、その母親に「金貨100枚持ってこないと息子の嫁にはさせない」と言われます。その頃、領主の家では娘の盛大な結婚式が催されていて、その宴の席で領主が「夜をかごに入れて持ってこい」と魔法使いに言いつけ、それができないで困っているとそれが娘の耳に入り...?
娘の、いつも凛とした態度や、強い精神力に胸が熱くなるおはなしでした。
すべてのおはなしを語り終えた後、マイヤース景子先生が最初につけたろうそくを持って「ろうそくを消す儀式をしましょう」と「2月生まれの方!」と聞いたところどなたもいなかったので「3月生まれの方!」と聞くと「はい!」と手を上げてくれた人がいました。「願い事をしてから消してください。」と先生が言うと、その人は「コロナウイルスが収束しますように!」とお願いして、見事に吹き消してくれました。
お帰りの際、もうすぐひな祭りなので折り紙で作ったお雛さまとお内裏さまを持って帰って頂きました。
みなさま、今日のおはなしをとても楽しんでくださったように見受けられました。
これからも精進して、素敵なおはなしをお届けできるように頑張りたいと会員一同思っておりますので、またどうぞ、いらしてくださいね。
☆プログラム☆
テーマ:夜-暗闇と明るさと-
ニョキニョキの話 -日本の昔話-
「かちかち山(語りつぎたい日本の昔話 4)」
小澤俊夫監修 小澤昔ばなし大学再話研究会再話 杉浦範茂絵 小峰書店
宝化け物 -日本の昔話-
「子どもに語る日本の昔話3」 稲田和子・筒井悦子著 こぐま社
妖精の丘が燃えている -アイルランドの昔話-
「こどもに語るアイルランドの昔話」 渡辺洋子編訳 茂木啓子編訳 こぐま社
明かりをくれ! -スペインの昔話-
「おはなしのろうそく30」 松岡享子訳 東京子ども図書館
古屋のもる -日本の昔話-
「こどもに語る日本の昔話1」 稲田和子・筒井悦子著 こぐま社
黒いお姫さま -ドイツの昔話-
「黒いお姫さま」 ヴィルヘルム・ブッシュ採話 上田真而子編・訳 佐々木マキ絵 福音館書店
かごにはいった夜 -フランスの昔話-
「フランスのむかし話」(偕成社文庫) 榊原晃三編訳 偕成社
次回の「大人のためのおはなし会」は、2020年4月17日(金)です。