中央図書館 大人のためのおはなし会 第35回 2021年4月
2021年4月16日(金)は、「世田谷区立中央図書館 大人のためのおはなし会」でした。
少し肌寒い曇り空の中、4名の方がいらしてくださいました。
マイヤース景子先生の始まりのお話しは、今日のおはなしのテーマ「お花・植物」に因んで、先生の好きなお花についてのお話しでした。先生は、画家堀文子さんの描いた「幻のブルーポピー」がお好きだそうです。このブルーポピーは、ヒマラヤ山脈の高地に咲くそうなのですが、先生はネパールに住んでいた時に何度もトレッキングをしていたのにその花に巡り合わなかったそうです。調べてみたら、その花は雨期にしか咲かない花なのだそうです。堀文子さんは81歳の齢で、雨期にそこまで行って描いたそうです。心臓を患ってからは遠くに行けないので、自宅のお庭に咲く花や、微生物等を描いていたそうです。
堀文子さんは100歳で亡くなりましたが、99歳の時に「ひまわりは枯れてこそ実を結ぶ」という本を出版されました。その題名の通り、堀文子さんは亡くなった後も、作品は実となって多くの人に感動を与えています。
私たちも、先人が語りついできた「実」である「おはなし」を引き継いで後世に伝えていきたいと思いました。
おはなし会の最初のおはなしは「花さき山」です。山菜を取りに行ってやまんばに出会った少女のあや。「この花は、ふもとの人間が優しいことをひとつする度にひとつ咲く」と言うやまんばの優しい語り口と、美しい花が一面に咲いている山の景色が心に染み渡る、滋味深いおはなしでした。
「バラの花とバイオリンひき」は、長らく子どもに恵まれなかった王様とお后様。子供を授かる方法を教えてくれた魔女による呪いのために、娘はバラの花として生まれます。不思議な魅力に彩られたおはなしですが、何をしても変わらなかったのに、貧しいバイオリン弾きの音楽を聴いたとたん人間に戻るという、ジプシーの魂の一端に触れることのできるおはなしでした。
「森の家」は、グリムの昔話です。木こりのお父さんにお弁当を届けに森に入っていった長女は道に迷ってしまい一軒の家に泊めてもらいます。そこには、お爺さんとめんどりと雄鶏とぶちの雌牛がいました。長女が帰ってこなかったので、次の日には次女がお弁当を持っていくことに。次女もその家に泊まりましたが長女と同じく地下室に閉じ込められました。三女もお弁当を持って道に迷い、その家にたどり着きましたが、その家の動物たちにも優しくしてあげたことで、見事に魔法が解けてお爺さんは王子様に...!昔話の王道を行く3回の繰り返しのリズムと、動物たちの「ドゥークス!」の返事がとても心地よいおはなしでした。
「針穴つばき」は、母親を早くに亡くした娘が、母の好きだった椿を想い笛を吹いていましたが、ある時白い着物姿の美しい青年(椿の精?)が来るようになり、毎夜一緒に笛を吹くようになります。そんな中、娘と一緒に暮らしている祖父が娘に縁談の話が来たと告げますが...。健気で一途な娘と青年の笛の音が、美しく心の中に残るおはなしでした。
「スミレの葉にもきずつく娘よ」は、90歳の母が庭にいる70歳の娘に「あなたはスミレの葉にも傷つくのだから早く入っていらっしゃい」と言っているところをたまたまそばを歩いていた王子が耳にして、きっと素晴らしく美しい娘に違いないと思い込み、自分の母親を通して結婚を申し込みます。さあ、この老母娘はどうしたでしょう?母親の苦肉の策と、衝撃的な結果に思わず笑ってしまう、トルコの楽しい楽しいおはなしでした!
「つつじの乙女」では、娘が、お祭りの時に知り合った5つの山を越えたところに住む若者と恋に落ちます。
どうしても会いたくなった娘は、ある晩山を越えて会いに行くことを思いつき、実行します。それからは毎晩山を越えて若者に会いに行きます。出かける前に両手にお米を一握りずつ持って行くのですが、若者の家に着いた時にはそれがつきたてのお餅になり、二人で食べるのでした。しかし、若者はこの娘を魔性の女と思うようになり...。娘の強くひたむきな愛が、真っ赤なつつじと重なって、深く印象に残るおはなしでした。
「リンゴ娘ニーナ」では、貧しいリンゴ農家の父親が、リンゴが少なかったので籠に娘のニーナを入れてお后様に売ってしまいました。ニーナはすぐに見つかりましたが、そのままお屋敷に住むことになりました。お后のお気に入りになったニーナを妬む召使たちに意地悪をされますが、そのたびに現れる不思議な青年のおかげでしのぐことができました。さらなる難題を召使に出されたニーナは、その青年に教わった通り自分で魔人に挑みます。
試練に打ち勝ったニーナ、実はお后の息子だった青年、いなくなったと思っていた息子が現れて喜ぶお后、全てがめでたしめでたしの、後味スッキリのおはなしでした。
今日も無事に、いらしてくださった皆様の温かいまなざしに元気をいただいて、おはなし会を終えることができました。今日のおはなしのテーマは「お花・植物」だったので、感謝の気持ちを込めて折り紙で作ったお花を、お土産に持って帰っていただきました。
また次回も、たくさんの素敵なおはなしをお届けできたら嬉しいです。
テーマ:お花・植物
☆プログラム☆
花さき山 -創作-
同名絵本 斎藤隆介文 滝平二郎絵 岩崎書店
バラの花とバイオリンひき -ジプシーの昔話-
「太陽の木の枝」(福音館文庫)フィツォフスキ再話 内田莉莎子訳 堀内誠一画 福音館書店
森の家 -グリムの昔話-
「おはなしのそうそく19」 東京子ども図書館訳・出版
-休憩-
針穴つばき -日本の昔話―
「針穴つばき」(村田敦子再話集) 村田敦子再話 正文社
スミレの葉にもきずつく娘よ -トルコの昔話-
「お月さまより美しい娘」(世界の昔ばなし14) 小山皓一郎編訳 山口みねやす絵 小峰書店
つつじの乙女 -日本の昔話-
「松谷みよ子の本9 伝説・神話」 松谷みよ子著 講談社
リンゴ娘ニーナ -イタリアの昔話-
「子どもに語るイタリアの昔話」剣持弘子訳・再話 こぐま社
次回は、2021年6月18日(金)の予定です。
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