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中央図書館大人のためのおはなし会 第36回 2021年6月

 2021年6月18日(金)は、「世田谷区立中央図書館大人のためのおはなし会第36回」を「玉川ボランティアビューロー」で開催しました。

 今回の会は、緊急事態宣言延長により、6月中の区立図書館の「おはなし会」すべてが休止となったため、区立図書館では開催出来なくなりました。けれど、会員はこの会のための準備を重ねていましたので、文字通り中止にするのか、他の区の施設で開催出来ないか等々を考慮、検討をしました。

 そして、当会のもう一つの「大人のためのおはなし会」の会場の「玉川ボランティアビューロー」を利用させてもらえるとのことで、開催出来ることになりました。

 会員だけの内輪の会予定でしたが、いつも聞きに来てくださる横浜からのお客さまが参加してくださいました。


 マイヤース景子先生は、日本人の寿命と、8050問題、「ひきこもり」にみる桃太郎話について、話しをされました。

 日本人の平均寿命は、男性81.41歳、女性87.45歳となり、男女ともに80歳台の長寿国です。男性は香港、スイスに次いで世界3位、女性は香港の次の2位とのことです。

 そんな平均寿命の80代の親が、50代の子どもたち(引きこもりの息子、娘たち)の世話をしているのが、8050問題です。「引きこもり」は、現代の問題と思われがちですが、今に始まったことではなく、大昔からあったのです。何と昔話の「桃太郎」にも「引きこもり桃太郎」があったのです。

 「日本民話の会」の会長の立石憲利さんが、岡山を中心に数多くの「桃太郎」を再話しています。その中に「引きこもり桃太郎」が入っています。


「桃太郎話 ―みんな違って面白いー」立石憲利著 岡山デジタルミュージアム発行


 私たちは、語り手として、昔話を語り継いでいきたいと活動しています。昔話「桃太郎」一つ取っても、各地の数多くの語り手によって伝えられたそれぞれの「桃太郎話」があることが分かります。

 心に響いた「おはなし」を語るのが一番ですが、「おはなし」にも沢山のそれぞれの「おはなし」があることを心して、昔話を学びながら語り継いでいきたいと思っています。


中央図書館でのおはなし会では、テーマが決まっています。

今回のテーマは「雨・天の恵みと試練」でした。


 最初の『ちいさいモモちゃん3あめこんこん』の絵本は、初めて傘と長靴を買ってもらったモモちゃんのおはなしです。子どもの頃、傘を買ってもらい雨が降っていなくても傘を差したかったこと、モモちゃんのワクワクの気持ちが手に取るようです。

 手袋人形では、「もういいかい?」「まあだだよ」と声を掛け合いながら始まり、紫陽花とカエルの可愛らしい指人形で和みました。


「古屋のもる」とは、古い家の雨漏りのことです。

 老夫婦が「世の中で一番怖いのは古屋のもるだ」と話しているところに、馬の子を盗みに入ったトラオオカミは意味が分からない「古屋のもる」を恐れます。やがて、雨が大降りになり始めると老夫婦は「古屋のもるが出るぞ」と大騒ぎ。それを聞いたトラオオカミ「古屋のもるに食われたら大変だ」と大慌てで逃げだします。その様子をみてトラオオカミを馬と間違えた泥棒は・・・?


「雨ごいの名人 -ジプシーの昔話」

  雨を待ち望む村に一人の老人がやってきます。老人は馬を乗り回すように天気を思いのままに出来るというのです。雨を降らしたらお礼に梨を100㎏ほしい、と言いますと、雨を降らせてもらいたい村の人々は受け入れます。おじいさんが呪文を唱えた後、村人に家へ帰るように促します。おじいさんは村人がいなくなると「こんなに晴れていては雨が降る訳がない」と独り言。そこへ、狐がやってきて雨を降らせてくれるといいます。村人をだました老人が今度は狐にだまされるのですね。


「やもめとガブス インドネシアの昔話」

  お腹がすいていた貧しい女が、小さな水たまりにいるガブス(川魚)を食べようと思うのですが、ふと可愛そうになって止めます。するとガブスの声が聞こえてきます。「神様、雨を降らせてください」と一生懸命神に祈っているのです。すると、照っていた空から太陽が消え見る間に雨がザァーッと振りだします。それを見た女も家に帰って、「神様、お金をください」と一日中、一心不乱に祈ります。その声がうるさいと隣の家の金持ちは苦情を言います。夜中になっても祈る声に我慢が出来なくなり、隣の金持ちは袋に瓦やガラスを詰め込んでやもめの家の屋根の穴から落とします。日本の昔話の天福地福を思い出します。


 「雨んぶちおばけ」 バケモンがこわい臆病なとっつぁまは、法事から帰って家の敷居をまたいだ途端、冷たいものが首根っこに当たり「バケモンだ!」と大騒ぎをしておかかに助けを求めます。おかかは屋根から落ちたあまんぶち (雨だれ)だと言います。それを知ってからとっつぁまは、こわいものがなくなってしまい、どんな暗い夜道でも笑って歩けるようになりました。しばらくたって村におかしなバケモンが出るという噂がたち、「退治してやるべ」と出かけます。バケモンが橋の下に隠れたのでながーい竿で川の中を突っつくと、チャランと妙な音が。よく見ると川の中に水がめがあって、その中に大判小判がザクザク。大判小判がとっつぁまに、「有難い。一生水の中に、おらにゃならんかと思った」と、お礼を言いますが、おかかに頭が上がらないとっつぁまは「おかかに聞いてみないとわからない」 最後の場面、こわいものがなくなったとっつぁまも、おかかには、頭があがらない、思わず笑ってしまいます。


 「雨をまちながら」は、 インドの農民と大地との関わりを描いたユニークな絵本です。

 働き者のベルウは日照り続きのため畑を耕すことが出来ません。気象台に聞きに行きますが、雨が降らない理由はわからない。ベルウは帰り道に涼しげな木陰で一休みします。そこで知り合ったおばあさんが日照りにも意味があると教えてくれます。働くことも大事、でも、休むことも大事ということです。


 「ヒツジとヤギとライオン ―ユダヤの昔話-」

大好き同士のヒツジとヤギですが、ヒツジが家を建てるときにヤギは協力をしてくれませんでした。家が完成し土砂降りの雨の日にヤギは家に入れてほしいと頼みますが、ヒツジはどうぞとはいいません。野宿をしたヤギは死んでしまいます。そして、グリム童話の狼と七匹の子ヤギを思い出すようなお話になります。しかし裁判で決着をつけるというのは、いかにもユダヤ民族のおはなしです。


 メンバーを褒めるのは自画自賛のようで恥ずかしいのですが、楽しいおはなし、心温まるおはなしとたくさん語ってくれました。梅雨という鬱陶しい季節に加え新型コロナで気持ちも沈んでいますが、おはなしを聞いた後は気持ちも穏やかになり解放され心豊かになりました。 


☆プログラム☆

         テーマ: 雨・天の恵みと試練


あめこんこん -創作-                          

   「ちいさいモモちゃん3 あめこんこん」松谷みよ子文 中谷千代子絵 講談社

手袋人形「あじさいとあまがえる」 (詩「あ」のつくひ 工藤直子作) 

   「ことばあそび1年生」 伊藤英治編 村上康成絵 理論社


古屋のもる -日本の昔話―                    

   「子どもに語る日本の昔話1」 稲田和子・筒井悦子著 こぐま社


雨ごいの名人 -ジプシーの昔話-                      

   「太陽の木の枝  -ジプシーのむかしばなし-」

     フィツォフスキ再話 内田莉沙子訳 堀内誠一画 福音館書店


やもめとガブス -インドネシアの昔話-                

   「おはなしのろうそく12」 花岡泰隆・松岡享子訳 東京子ども図書館

                                                      

         - 休憩 -


雨んぶちおばけ -日本の昔話-                    

   「日本のおばけ話」 川崎大治作 赤羽末吉画 童心社


雨をまちながら -創作-

    同名絵本 カマクシ・バラスブラマニアン文 ユスフ・バンガロレワラ絵

        立松和平訳 河出書房新社


ヒツジとヤギとライオン ―ユダヤの昔話-                

   「お静かに、父が昼寝しております-ユダヤの民話-」(岩波少年文庫)

        母袋夏生編訳 岩波書店

                  次回は、2021年8月20日(金)の予定です。

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