中央図書館大人のためのおはなし会 第58回 2025年2月
2025年2月21日(金)は、「大人のためのおはなし会」が世田谷区立中央図書館「おはなしのへや」で開かれました。強烈寒波が襲い、日本海側は連日の大雪ですが東京では青空が広がり、今回のテーマ「空と地」にふさわしい日となりました。8名のお客様をお迎えして、外は寒くとも心温まるおはなし会となりました。
最初のお話は「りゅうとかめ」。 ずっと泥沼に暮らす亀は、広い空へ行ってみたいと思ってある日、龍のしっぽに食いついて天に上ります。天に上る間は口を開いてはいけない約束だったのに、龍の声につい返事をしてしまい元の泥沼に落ちてしまいました。情景たっぷりの語りに思わず引き込まれました。
「魔法のかさ」。魔法使いが忘れた傘をお百姓が拾っておかみさんに渡します。おかみさんが次々に起こすナンセンスな面白さがたっぷりです。1,2,3まで数えると「ヒュ~」と家に戻り、5で車の中に、7で教会の塔に「ヒュ~」 聞き手も一緒に笑いながら「ヒュ~」と飛んでいきます。最後に傘はどこかへ飛んで行ってしまい、持ち主のわからない傘にはご用心!という忠告が残りました。
「空をおしあげたマウイ」 語り手がニュージーランドへ旅行した際に入手されたニュージーランドのマオリ族のおはなしです。昔、南の海に神々に守られて大きくなった、マウイという若者がいました、鳥や動物の言葉がわかり呪文も身に付けました。その頃の空は今よりも低く息苦しいものでしたので、マウイはその空を押し上げようと力の湧く水を飲んで「エイッ! エイッ!」と押し上げました。すると空はどんどん高くなっていきます。とてもスケールの大きいおはなしです。
「カメとハクチョウ」。 ヒマラヤの山奥に住む亀が、飛んできた二羽の白鳥の家に誘われ、亀は棒をくわえて、その両端を白鳥がくわえて飛びたちました。ちょうどおしゃべり好きな王様の御殿の庭の上に来た時、子どもたちが下からはやし立てました。亀は怒鳴り返そうと口を開け下へ真っ逆さま、死んでしまいました。大臣は王様に、口をきいてはいけない時にお喋りする者はこのようになると戒めたのです。現代にも通じる教訓的なおはなしがサラリと語られました。
「木花開耶姫」。 昔々、国を治めるため天上から下ってきたニニギノミコトは、ある日浜辺でコノハナサクヤヒメを見初め妻にします。ところが授かった子供を疑われたことに対し、コノハナサクヤヒメは産室に火を放ち死をもって出産しました。その時生まれたのがウミサチヒコ、ヤマサチヒコで、コノハナサクヤヒメは富士山の神となりました。日本の壮大な神話世界をそれにふさわしい語りで楽しむことができました。
「クナウとひばり」。アイヌの国の上に広がるうす緑のなかぞらの国、さらにその上の青いおおぞらの国、という語り出しからアイヌの人々の自然観が伝わってきます。アイヌの国の美しさを好きになり、おおぞらの国の王との結婚を拒んだなかぞらの国の女神クナウ。クナウは王の怒りにより福寿草に変えられてしまいますが、雪深い2月に黄金色に咲くこの花は春の訪れを知らせます。ひばりもまた王の怒りによりおおぞらの国に戻れず、“それはひどい、帰りたい!“と、ピーチク鳴きます。ちょっと切なくなるおはなしです。
☆プログラム☆
りゅうとかめ ―日本の昔話-
「ママお話きかせて-松谷みよこの昔話-」 『やさしい心を育てるお話編』
千世繭子文 池田げんえい絵 小学館
魔法のかさ ―創作―
「おはなしのろうそく30」 R・ファイルマン原作 E・コルウェル再話
松岡享子・浅木尚美訳 東京こども図書館
空をおしあげたマウイ -ポリネシアの昔話-
「マウイの五つの大てがら(世界むかし話16太平洋)」
光吉夏弥訳 チャールズ・キーピング絵 ほるぷ出版
カメとハクチョウ -インドの物語―
「ジャータカ物語-インドの古いおはなしー」岩波少年文庫
辻直四郎・渡辺照宏訳 岩波書店
木花開耶姫 -日本の神話―
「そばの花かんざし(村田厚子再話集Ⅱ)」
村田厚子著・発行
クナウとひばり -アイヌの昔話-
「おはなしのろうそく20」 東京子ども図書館 編・刊
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