大人のためのおはなし会 第34回 2022年7月
2022年7月15日(金)は、玉川ボランティアビューローで「大人のためのおはなし会 第34回」が行われました。
しとしとと雨の降る中を3名のお客様が来てくださいました。
皆様早めにいらしてくださったので、始まるまでの時間、「アジの開き」の手遊びをしました。1番目は「い」のつく魚で「いわし」の開きを作り、2番目はニシン...と続き4番目は「しらす!」というお声がありましたが開きにするには小さすぎたので「しゃけ」にしました。最後は「クジラの開き」を作って「ドッカ~ン!」と決まりましたが、まだ時間が残っていた為「たまごをポーン」の手遊びをしました。子供のおはなし会では、なかなか答えが出ずに苦戦するのですが、大人ですから、「生卵」から「ホットケーキ」までサクサク答えて頂き、楽しい時間となりました。
今日のマイヤース景子先生の始めのお話しは、今日がちょうどお盆なので、お盆に関するお話しでした。まずお盆には新盆(7月)と旧盆(8月)があります。新盆は東京を中心とした一部の地域のみで、大多数の地域は旧盆です。お盆と言えば、蓮の花や葉を飾りますが、昔は「蓮の葉の上の朝露を集めて墨を作るとお習字が上達する」と言われていたそうです。水が溜まるほど蓮の葉が大きいということですね。蓮の花は泥中の花と言われるように泥水の中から美しい花を咲かせます。これは、悟りに行くという意味があって仏様のお座りになっている台座が蓮の花である場合は、「悟っている」ことを表し、蓮のつぼみを持っている場合は「悟りを開く前の、修行中」を表しているということだそうです。
睡蓮とは違うもので、睡蓮は、朝咲いた花が夕方になると眠るように閉じることにちなんで名づけられたそうです。そして泥水ではなくきれいな水に咲いています。芥川龍之介の「蜘蛛の糸」でお釈迦様が蓮池の周りを歩き、そこから地獄を見る場面は睡蓮をイメージさせるし、「蓮のうてな」というところでは蓮をイメージしますので、どちらかなと思いながら読んでみるのも楽しいでしょうということでした。
私たちおはなしたまごの会員の1人が、この「蜘蛛の糸」を語っていたのですが今は病床にいるので、早く元気になってほしいとの願いを込めて、このお話しをしたそうです。
みんなの願いが一つになったところで、おはなし会が始まりました。
最初のおはなし「鬼のお面をかぶった娘」は、親元を離れて奉公に出た小さい娘が、両親にそっくりのお面に毎晩話しかけて寂しさを紛らわせていたのに、奉公仲間のいたずらによって、それが赤鬼のお面に代えられてしまいます。ところがかえってそれにより、娘は後に大金を手にして両親と幸せに暮らすことになります。嫌がらせでやったことが、後でいいことに代わるという後味の良い、そして少女の純粋な気持ちに心が洗われるおはなしでした。
「床屋と幽霊」は、貧乏な床屋が「ご飯もろくに食べられない」とおかみさんになじられ、ついには殴られてしまい、自分のふがいなさに家を出て、お金を稼いで来ようと決心します。
そこでひょんなところで幽霊と会い、うまくだまして一夜にして大金持ちになり、おかみさんとよりを戻して幸せに暮らすというおはなしです。インドならではのユーモラスな語り口と、物語の終わりを締めくくる一編の詩のようなリズムよい言葉が、美しい響きの余韻を残してくれる爽快なおはなしでした。
「うちの中のウシ」は、おかみさんがうどんを作ろうとしたら、長いうどんを作るには台所が狭すぎると文句を言い、「もっと大きな家に住みたい」と言いますがそんなお金はないのでお百姓は「知恵のありぞう爺さん」に相談に行きます。そこで忠告通りめんどりとヤギとブタと牛をを家の中に入れていくのですが、最初は文句だらけのお百姓とおかみさんでしたが「下には下がある」の境地に達したので、知恵のありぞう爺さんは「そろそろ牛を出すときじゃ」と言い、順に牛、豚、ヤギ、めんどりと出していくと、なんと家の中が広々と感じられ、おかみさんもこの家の大きさに大満足!お金をかけず、知恵で乗り切ってあっぱれ!!なおはなしでした。
「ハーメルンの笛吹き男」は、皆さんよくご存じの、あの有名な「グリムの伝説」のおはなしです。大体の筋はわかっていても伝説として、1284年に起こった話で子どもは130人連れさられて、目の見えない子供と耳の聞こえない子供だけが後に戻ってきたが、他の子ども達がどこで何をしているかは伝えられなかったと語っているところが、とても印象的で現実味を帯びたおはなしになっていました。ハーメルンの街に迷い込んだような気持ちにさせるおはなしでした。
「強清水」は山梨のおはなしで、その地方の方言で語られました。親孝行の息子が、毎日炭を売ったお金で父親の大好きなお酒を竹筒に買っていたのですが、ある日全く炭が売れずにお酒を買えず困っていると、谷間に泉を見つけ、そこの清水を竹筒に入れて持って帰ったら、それを飲んだ父親が「これは素晴らしい諸白のお酒だ!」と言って喜んだので、息子も一口飲んでみましたがやはり清水で、父親が飲むと諸伯の酒になるという不思議なものでした。きっと孝行息子に感心した神様が、父親が飲む時に清水に代えてくれたのだろうということになり、「親は諸白、子は清水」と言われるようになり、のちに「子は清水」の「子は」が「強(こわ)」になって「強清水」と言われるようになったのだそうです。父親と息子の会話が、方言でとても穏やかに伝わってきて、のどかな景色が目の前に浮かび上がってくるおはなしでした。
「木花咲耶姫」は日本の神話で、ニニギノミコトが天から降りてきて木花咲耶姫と出会い、お嫁にもらいたいと父親に言うと、父親は喜び、姉の磐長姫も一緒に嫁がせました。ところがニニギノミコトは、美しくない磐長姫を返してしまいました。父親は「磐長姫も一緒に嫁がせたのは、ニニギノミコトやその子孫の命が岩のように永久不変になるようにと願っての事でしたが、磐長姫を返されたので寿命は、はかなくなるでしょう」と言ったそうです。一夜で身ごもった木花作耶姫をニニギノミコトは自分の子かと疑ったので、木花咲耶姫は「天の神様の子どもなら何があっても無事に生まれるでしょう」と言って産屋に火をつけさせ、炎の燃え盛る中、無事に海幸彦と山幸彦を産みます。疑いは晴れましたが、木花咲耶姫はその出産で亡くなってしまいました。今では木花咲耶姫は富士山浅間神社に祀られ、磐長姫は京都の貴船神社に縁結びの神として祀られているそうです。神様も「自分の子か?」と疑ってしまう等人間らしさが垣間見られる、けれども壮大な神話の世界に浸ることのできたおはなしでした。
「アリョーヌシカとイワーヌシカ」は、孤児になってしまった姉のアリョーヌシカと弟のイワーヌシカがさ迷い歩いていると喉が渇いてしまい、イワーヌシカがアリョーヌシカの忠告も聞かずにヤギの蹄にたまった水を飲んでしまいます。途端にイワーヌシカは子ヤギになってしまい、アリョーヌシカは途方に暮れて泣いていると1人の商人がやってきて結婚を申し込みます。アリョーヌシカは、イワーヌシカも一緒に暮らすという条件で承諾します。そして幸せに暮らす事になるのですが...。ヤギの蹄から水を飲むと子ヤギになってしまったり、悪い魔女が出てきたり、おとぎの世界をじっくり堪能することができる、美しくて楽しいおはなしでした。
今日のお土産は、折り紙で作った金魚です。この蒸し暑い中に涼を感じて頂けたらと思い、水面の台座を付けました。お客様には、金魚すくいのようにビニール袋に入れて持って帰っていただきました。雨の降る中、お越しいただき、本当にありがとうございました。
次回は、9月16日(金)の予定です。また是非いらしてください。お待ちしております。
☆プログラム☆
鬼のお面をかぶった娘 -日本の昔話-
「日本の昔話1 はなさかじい」 おざわとしお再話
赤羽末吉画 福音館書店
床屋と幽霊 -インドの昔話-
「語りつぐ人びと*インドの民話」(福音館文庫)
長弘毅著・訳 福音館書店
うちの中のウシ -創作-
「おはなしのろくそく5」 メイベル・ワッツ作
松岡享子訳 東京こども図書館編・出版
ハーメルンの笛吹き男
-グリム兄弟『ドイツ伝説集』より -グリムの昔話-
同名絵本 レッケ文 リスベート・ツヴェルガー絵
池田香代子訳 BL出版
- 休憩 -
強清水 -日本の昔話-
「山梨のむかしむかし」
山梨昔ばなし再話研究会再話・発行
木花咲耶姫 -日本の神話-
「語りの本 そばの花かんざし 村田厚子再話集Ⅱ」
村田厚子再話 正文社
アリョーヌシカとイワーヌシカ -ロシアの昔話-
「まほうの馬」 A・トルストイ M・ブラートフ文
高杉一郎訳 岩波書店
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