中央図書館 大人のためのおはなし会 第31回 2020年 8月
2020年8月21日(金)、世田谷区立中央図書館にて「大人のためのおはなし会」が開催されました。
「大人のためのおはなし会」は、2月に行われて以降、コロナの影響でお休みしていましたので半年ぶりの開催です。朝から太陽が容赦なく照りつける中、19名の方がいらしてくださいました。
初めのマイヤース景子先生のお話しは、昔の流行り病に関するお話でした。622年、聖徳太子が発病され、その病気平癒を願って造られた太子等身の像が釈迦三尊像ですが、その前年や同年に母や妃も亡くなっているので疫病であったと考えられているそうです。
平安時代になると、疫病自体を「鬼」の姿で表した絵巻が作られました。国宝「辟邪絵(へきじゃえ)」です。疫病である鬼が、ある屋敷に入ろうとすると門前に番人がいて念仏を唱えていたので、鬼たちが感心すると、門番が念仏を唱えている人の名簿を渡し、鬼たちが「この人たちには悪いことをしない」と約束をして立ち去ったという絵巻です。これが日本最古の、疫病を絵で表したものです。
西洋で一番古い、疫病を描いた絵画は、有名なピサの斜塔のそばにある修道院にあり、人々の上を悪魔が飛び回り、魂をとって病気にさせるという絵画だとされています。
14世紀ヨーロッパで猛威を振るったペストでは、ヨーロッパの人口の1/3が亡くなりましたが、この時、ペストから逃れるためにフィレンツェ郊外に引きこもった男女10人が10日続けて物語を語って出来たのが「デカメロン」です。大変な時にこそ、物語を語り合ったことが癒しになったそうです。私たちも、先人に倣って物語を語り合い、癒しのひと時を分かち合っていきたいですね。
今日は、私たち会員のお孫さんも1人来てくれたので、たまごの手遊び「たまごをポーン」をやってから、おはなしが始まりました。
「若返りの臼」は、なんと臼で挽くものは腰の曲がったおばあさん!臼で挽かれた後はリンゴのようなほっぺの若々しい姿になるという素晴らしいものです!この臼の評判を聞きつけたおばあさんが、苦労して遠くからやって来ましたが、若返った後、自分のやらかした数々の失敗を1つ残らず繰り返さないといけないという、まさかの条件付きだと知り、さあ、おばあさんはどうしたでしょうか?私ならどうするかな?と思わず考えてしまう、とっても身につまされるけど、とっても楽しいおはなしでした!
「ねこのよめさま」は、長者の子供が野良猫を拾ってきましたが主に追い出され、貧しい男がその猫を可愛がって育てると、とっても利口で器量良しの猫に成長します。猫なのにとても甲斐甲斐しく働いてくれるので、「人間になってくれたらなあ」と言うと猫も「私も人間になりたいのでお伊勢参りに行きます!」とお伊勢参りに行くことに...。猫と人間の、お互いを思いやる気持ちがほっこりと心地いいおはなしです。
「金の毛が三本ある悪魔」は、貧しい家に幸運の皮を被って生まれてきた男の子。14歳になると王様の娘と結婚する運命だと言われています。たまたま王様がそれを聞きつけて、その赤ちゃんを箱に入れて川に流してしまいます。それでもちゃんとその赤ちゃんは無事に拾われ、すくすくと14歳に成長します。そしてまたその存在を知ってしまった王様に殺されそうになりながらも、お姫様と結婚することになるのでした。王様は怒って、「悪魔の三本の金の毛を取ってこないと婿とは認めない」というので、旅をすることになるのでした。幸運の皮を被った人は、どんな困難な目にあってもうまく切り抜け、欲深な王様の末路はくすっと笑ってしまう、物語の王道を行く清々しいおはなしでした。
「みそ買い橋」は、飛騨の山深いところにいる男が、「町に行ってみそ買い橋に行ってみればいい話を聞けるぞ」とおじいさんが言う夢を見ました。早速みそ買い橋に出かけましたが、何日立っていてもいい話が聞けません。すると1人の男に「こんなところにボーっと立っていて何をしているのか?」と聞かれ、夢の話をすると「そんな夢を信じるなんて馬鹿だな。私はこの前、どこどこに宝が埋まっているという夢を見たがそんなもの信じるほど馬鹿じゃないよ」と、まさに自分の家に宝が埋まっていることを教えてもらいます。そして見事に宝を見つけ長者になるという、自分の夢と他人の夢が合わさって宝のありかを知るという、まさに不思議なロマン溢れるおはなしでした!
「ヒマラヤのふえ」は、ヒマラヤの谷あいに住む貧しい夫婦。一人のおじいさんが一夜の宿を求めると、貧しいながらも精一杯のおもてなしをします。おじいさんからお礼にもらった笛を夫が吹くと、素晴らしい音色が流れ出し、岩だらけの土地に花々が咲き乱れます。笛の音色は、空に瞬く三ッ星にも聞こえてきました。三ッ星はフクロウの姿になって地上に降りてきます。ところが笛の音色に聞き惚れ過ぎて帰る時間が遅くなることに気づき、笛を吹けないように夫をマルハナバチの姿に変えてしまいました。おじいさんの助けを借りて妻は夫を人間に戻すことに成功します。美しいヒマラヤの景色と澄んだ笛の音色が聞こえてきそうな素敵なおはなしでした。
「浦島太郎」は、言わずと知れた日本の代表的な昔話ですが、このおはなしは、いじめられている亀を助けるのではなく、浦島太郎が釣りをしているときに五色の亀を釣り、美しい亀なのでしばらく見とれますが、海に逃がしてあげます。その後、また違う亀が釣りあげられるのですが、その亀が言葉を話し「先ほどの五色の亀は乙姫さまです。竜宮城に招待しますのでどうぞいらしてください。」と言って太郎を竜宮城に連れていくというものです。美しい竜宮城の景色、彩色豊かな海の情景が目に浮かび、海の涼を存分に感じられました。最後に太郎がおじいさんになってしまうところで出てくる白い煙が、薄紫色になっていく紫雲出山を、一目見たくなりました。
久しぶりのおはなし会、皆さま「楽しかった」と笑顔で仰ってくださいました。猛暑の中いらしていただいて、本当に有難く思いました。ありがたい気持ちを込めて、折り紙で作ったヒマワリを持って帰っていただきました。これからも、おはなしをたくさん伝え続けていきたいと思っております。またどうぞいらしてくださいね!お待ちしております。
☆プログラム☆
テーマ:不思議なおはなし
若返りの臼 -創作-
「針穴つばき(村田厚子再話集)」リヒャルト・レアンダー作 村田厚子再話 成文社
ねこのよめさま -日本の昔話-
「日本のむかし話1」(青い鳥文庫) 松谷みよ子作 講談社
金の毛が三本ある悪魔 -グリムの昔話-
「グリムの昔話3 森の道編」 乾侑美子訳 童話館出版
-休憩-
みそ買い橋 -日本の昔話-
「子どもに語る日本の昔話1」 稲田和子・筒井悦子著 こぐま社
ヒマラヤのふえ -インドの昔話-
同名絵本 A.ラマチャンドラン作 木島始訳 木城絵本の郷
浦島太郎 -日本の昔話-
「松谷みよ子の本9(伝説・神話)」 松谷みよ子著 講談社