中央図書館大人のためのおはなし会 第38回 2021年10月
2021年10月15日(金)は「世田谷区立中央図書館大人のためのおはなし会第38回」でした。
コロナ禍で、中央図書館の「おはなし会」はすべて中止でしたが、緊急事態宣言解除により、4月以来の半年振りの開催となりました。
爽やかな秋晴れの日になり、6名の方が参加されました。対面で「おはなし」を語ることが出来る幸せを改めて感じました。
マイヤース景子先生のご挨拶は、本日のテーマ「動物」に因み、動物の出てくる昔話についてでした。
「動物昔話」の起源は、太古の時代、狩猟は儀式であり、狩猟前や狩猟時、狩猟後などに行われる儀式の折に、部族の長が語る「動物のはなし」が初めだと考えられます。
文字で表された動物が登場する最古の物語は、紀元前3C頃の古代ギリシャ時代にラテン語で書かれた『イソップ物語』や、古代インドのサンスクリット文学の『ジャータカ』『パンチャタントラ』などがあります。日本では、『古事記』の中に「因幡の白兎」が現わされています。
民俗学者の関圭吾氏は『日本昔話集成』で約8千の昔話を「動物昔話」、「本格昔話」、「笑い話」の3つに分類し、稲田浩二・小澤俊夫両氏は『日本昔話通観』で、数の多い順に「昔語り」、「笑い話」、「動物昔話」、「形式話」と分けています。
動物昔話は、数多くありますが、動物が一番多く出てくる「おはなし」は何でしょう?答えは『十二支のはなし』です。では、十二支に入れてもらえなかった猫の他には? 「いたち」です。「いたち」に泣きつかれた神様は、毎月始まりの日を「いたち」に「つ」をつけて「ついたち」と呼ぶようにしたそうです。
『 詩 ああ どこかから』
ポストに自分宛ての手紙が入っていると嬉しいものですよね。まど・みちおさんの小さな生き物に寄せる眼差しがあたたかい詩でした。
『おてがみ』
まどさんの詩の後に、がまくんとかえるくんの「おはなし」でした。
ポストにお手紙が入っていない毎日にがっかりしているがまくんに、親友のかえるくんはお手紙を書いてかたつむりくんにがまくんの家まで届けてくれるよう頼みます。快く引き受けてくれたかたつむりくんでしたが、果たしてお手紙はいつ届いたでしょうか…?ともだち思いのかえるくんの優しさや二人の仲の良さが伝わるほのぼのとしたお話でした。幸せはゆっくりやって来るものなのかもしれませんね。
『ねぼすけじいさま』
ニワトリが、ねぼすけじいさまを起こすのを手伝うと、フクロウ、カラス、ウグイス、ミミズが次々とやって来てじいさまや村の人たちの役に立ちたいと申し出ます。そして頼まれた役目を一生懸命果たして、じいさまや村のみんなからとても喜ばれました。鳥たちもきっと嬉しく誇らしく感じたことでしょう。助け合う喜びに溢れているこんな幸せそうな村に行ってみたいなあと思いました。
『サルのきも』
病気の奥さんのためにサルの生き肝を取りにやって来たワニの旦那さん。うまくサルを騙して水の中に引き込もうとしますがあと少しのところでサルに計画を話してしまいます。さあ絶体絶命のサルはどうしたでしょうか? 人のいいワニの旦那さんと素直な奥さん、そして賢いサルの全員がハッピーエンドのほほえましい結末でほっとしました。「病は気から」と言いますが本当かもしれませんね。
語り手は、対面での語りは今回が初めてのデビューでしたが、初めてとは思えない落ち着いた語りでした。
『かちかち山』
悪さをするタヌキをウサギが懲らしめるとても有名で馴染みのあるお話ですが、今回のかちかち山は少し趣が違いました。おじいさんにタヌキ汁にされそうになった性悪タヌキは、おばあさんを騙して殴り殺し、「ばば汁」を作り、なんとおじいさんに食べさせてしまうのです!ことの顛末を聞いたウサギがここで登場し、おじいさんの代わりにタヌキに復讐をします。衝撃的な展開のお話でしたが、種を蒔くおじいさんとタヌキの歌の掛け合いや、タヌキがウサギと再会するたびに「それはよそのウサギだろう」と言われて簡単に騙されてしまう場面の掛け合いがユーモラスでありました。
『ずいとんさん』
あるお寺にずいとんさんという小僧さんがいました。ある日留守番をしていたずいとんさんがお経をあげていると、「ずーいとん」とずいとんさんを呼ぶ声が。なんとキツネが戸を、尻尾で「ずーい」とこすり、頭で「とん」と叩いていたずらをしていたのでした。本堂に逃げたキツネはご本尊さまに化けたからあら大変、ご本尊が二つに!どちらが本物?!そこでずいとんさんは頭を働かせて…。
ずいとんさんといたずらキツネの楽しい「おはなし」でした。
『コヨーテ、オオカミからヒツジをすくう』
ある日オオカミがやせているヒツジと太ってるヒツジを2頭つかまえて食べようとしますが、どちらを先に食べたらよいのか迷ってしまいます。そこで賢いコヨーテに決めてもらおうとしますが、コヨーテはある方法で見事にヒツジを救います。その方法とは…。コヨーテの賢さとオオカミの間抜けさにクスリとさせられたお話でした。そしてヒツジは意外と石頭なのですね。
『フクロウ』
ハイチでは、聞かせたい話がある人は「クリーク?」と声をかけ、聞き手は「クラック!」と応じてからお話が始まるそうです。ハイチの昔話『フクロウ』はそんな明るい掛け合いとともに始まりました。
フクロウは娘と恋仲になったけれど自分の顔を醜く思い、娘やその家族に見られたくありませんでした。ある晩、娘の家からダンスの会に招待されたフクロウは帽子を目深に被って顔を隠し、友だちのオンドリを誘って出かけましたが…。フクロウは夜が明けるのが気が気でなかったけれど、娘とダンスを楽しむ様子が語り手の楽しい歌や手拍子から伝わりました。おしまいはちょっぴり切ない気持ちになるお話でした。
☆プログラム☆
テーマ: 動物
詩 ああ どこかから
「まど・みちお詩の本」 伊藤英治編 理論社
おてがみ -創作-
「ふたりはともだち」(ミセスこどもの本)
アーノルド・ローベル作 三木卓訳 文化出版局
ねぼすけじいさま -日本の昔話-
「聞いてよかった日本の昔話集① 大竹麗子作 おはなしかご
サルのきも -タイの昔話-
「子どもに聞かせる世界の民話」矢崎源九郎編 実業之日本社
かちかち山 -日本の昔話-
「日本の昔ばなし1」(講談社文庫)松谷みよ子著 講談社
- 休憩 -
ずいとんさん -日本の昔話-
同名絵本 日野十成再話 斎藤隆夫絵 福音館書店
コヨーテ、オオカミからヒツジをすくう -アメリカ先住民の昔話-
「コヨーテのはなし-アメリカ先住民のむかしばなし-」
リー・ペック作 徳間書店
フクロウ -ハイチの昔話-
「魔法のオレンジの木」ウォルクスタイン採話
清水真砂子訳 岩波書店
次回は、2021年12月17日(金)の予定です。
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