top of page

大人のためのおはなし会 第9回

 1月9日(金)は、新年早々木枯らし吹く中、富士山を遠くに、松飾りを横目に見ながら、玉川ボランティアビューローへ向かいました。すでにたくさんの方々がいらしていて、日当たりの良いお部屋の中は、新年のご挨拶と和む声で益々ぽかぽかになっていきました。

 オープニングは、手遊び「たまごをぽん」で、初たまごを割って始まりました。今年は羊年、干支の羊についての豆知識を聞いた後、いよいよお屠蘇気分から、おはなしモードに突入です。

 おはなし会は、1月にぴったりの日本の昔話「やきもち和尚」で始まりました。和尚様は一人こっそりやきもちを食べたくて、邪魔な小僧さんを遠ざけようと試行錯誤を繰り返しますが、一枚上手の小僧さんに阻まれてなかなか口にすることができません。手をこまねいた挙句、とうとう和尚様は反省して覚悟を決めました。何度聞いても、毎回笑ってしまう微笑ましいおはなし。

 次の「三つのオレンジ」は、理想の女性を求めて旅に出た王子の物語。2度も誘惑に負けてしまいますが、3度目にやっと理想の娘にめぐり合うことができました。ところが、魔女によって娘は金の羽のハトに変えられて飛んで行ってしまうのです。オレンジ色、ミルクのような白、血のような赤、金色など色彩鮮やかな表現が、いかにも情熱の国イタリアらしさを醸し出しています。料理番をからかうコミカルなハトの歌声もたっぷり聴けました。

 「こんな顔」は、夜になるとオバケが出ると評判のこわい山に、ある男が日暮れに登っていきます。すっかり暗くなり、男はさびしくなってくるが、それでもぐんぐん歩いていく。ふと気がつくと、スタスタ、前を行く者がいる。道づれができたと一旦は喜んだものの、そこでみたものは、ギャーっ、オバケ!

 「世界でいちばんやかましい音」は、やかまし好きの王子が、誕生日に世界でいちばんやかましい音を聞きたいと言います。そこで世界中に伝令が飛ばされ、その日その時刻にみんなで一斉に叫ぶことになるのですが、世界一やかましい音を聞いてみたいのは、王子ひとりではありませんでした。果たして、お誕生日に聞こえてきた音はどんな音だったのでしょう。 町中の人達が心ひとつになると、とてつもなく大きな力になるのですね。聞き手はずんずんとおはなしの世界に引き込まれていきます。

 「話十両」は、江戸に出稼ぎに出た亭主が、一生懸命に貯めた金で実家にお土産を買って戻ろうと思い、町中をうろついていると、『命売ります』という妙な看板に出会う、その意味を主人に尋ねると、十両出せば三度命拾いができるとのこと。命より大切なものはないと、思い切って有り金はたいて、話三つを買うことを決意。その話三つとは、『大木より小木』、『ごちそう食ったら、油断するな』、『短気は損気』、以上十両なり。聴き手はおみくじ引いた気分で話の展開が気になり出します。語りのテンポがおはなしと絶妙に合っていて、たっぷり楽しむことができました。

 「みつけどり」は、グリムの昔話。最初は‘みつけどり’って何の名前かしら?と思いつつ聞いていくと、ある少女の名前であることがわかります。偶然出会った仲好しなふたりの少女は、料理女に姿を変えた魔女の意地悪に負けじと、力を合わせて立ち向かいます。ふたりはある場面ではバラの木と花に、次は教会と灯りに。最後は池とカモに姿を変えて闘います。それは、いかにもグリム童話らしくのどかな上に痛快でした。話し手もテンポよくどんどん進めます。とうとう魔女がおぼれ死んでしまい、2人は無事連れだって家に帰ることができました。やったー!

 「十二支のはなし」福島弁で語られました。正月二日、神様のところに早く来たものから順にその年を作ってもらうというおふれが出た。動物たちはそれぞれに集まってくる。ずるがしこいねずみ、おっとりものの牛、猪は、最後に猪突猛進して滑り込みセーフ。その日を忘れてしまった猫。最後にいたちが登場するシーンは、このお話特有で思わずに納得してしまう。耳にやさしい福島弁の語りが、何ともいえぬ雰囲気と説得力があり、新年にとてもふさわしいおはなしでした。

 家事に追われた、暮れからお正月でしたが、数時間おはなしの世界にタイムスリップすることができました。今年もまた、皆さまとご一緒に現実とお話の世界を行き出来たら幸いです。新年早々、遠方から集って下さった方々、会員に会いにきて下さった方々に心から感謝いたします。

☆プログラム☆

やきもち和尚 -日本の昔話-                      

     「日本の昔話 1」(はなさかじい)おざわとしお再話 赤羽末吉画 福音館書店

三つのオレンジ -イタリアの昔話-                  

    「子どもに語るイタリアの昔話」 剣持弘子訳、再話 こぐま社

こんな顔 -日本の昔話-                         

「子どもに語る日本の昔話 3」稲田和子・筒井悦子著 こぐま社

世界でいちばんやかましい音 -創作-                 

    同名絵本 ベンジャミン・エルキン作 松岡享子訳 太田大八絵 こぐま社

- 休憩 -

話十両 -日本の昔話-                        

  「日本の昔話 3」(ももたろう)おざわとしお再話 赤羽末吉画 福音館書店

みつけどり -グリムの昔話-                      

    「子どもに語るグリムの昔話2」 佐々梨代子・野村泫(ひろし)訳 こぐま社

十二支のはなし -日本の昔話-              

    「かたれやまんば 第1集」 藤田浩子再話 藤田浩子の語りを聞く会発行

Follow Us
Search By Tags
  • Facebook Classic
  • Twitter Classic
  • Google Classic
bottom of page