大人のためのおはなし会 第10回
2012年5月11日に、玉川ボランティアビューロー主催で始まった「ストーリーテリング講座」で学んだ仲間たちとの勉強会を「おはなしたまごの会」と名付けて、マイヤース景子先生のご指導のもと語りの勉強を重ねて3年が過ぎました。
私たちの最初の発表の場である「大人のためのおはなし会」が、4月10日(金)第10回を迎えました。当日は、冬に戻ったような気候にも係わらず、多くの方々に足を運んでいただき、節目の会を催すことができましたことを感謝申し上げます。また、これまで聞きにいらしてくださった皆さまの言葉に励まされて回を重ねられましたことを、心よりお礼申し上げます。
私たちのテーマ手遊び「たまごをポン!」でおはなし会が、始まりました。
最初の「こぶ取りじい」は、「一でしっぺ……」のリズムが楽しいお話です。鬼が、明日も踊りにくるようにと、おじいさんの右ほおからこぶをもぎ取り預かります。翌日現れたのは、左ほおにこぶのある隣のおじいさん、踊り下手のおじいさんのほおは帰りには…。
「チム・ラビットみつばちをかう」、 チムは、おかあさんの「うさぎは、はちを飼うもんじゃありません」の言葉にもめげず、最初の失敗にもあきらめずに、ライムやクローバーの野原に巣を置き、蜂の来るのを待ちました。かわいい仕草や言葉のチムですが、心念ある行動が実を結び、たっぷりの蜂蜜を家族で楽しめるようになりました。そしてチムは、おかあさんから「うさぎだって、飼おうと思えば蜂を飼うことができるんだねぇ。とにかく、うちのチムはできたんだ」の言葉をもらいましたよ。子どもだけでなく大人からも共感を得られる素敵なおはなしと語りでした。
「杜子春」は、芥川龍之介の有名な短編小説。手を入れても25分掛る長い創作に取り組みました。杜子春は仙人になろうと、あらゆる試練に耐えていきますが、母親への愛情から仙人にはなれず、人間らしく生きようと決心して終わります。聞き手の方から、「聞き入ってしまいました」と声を掛けていただくことが出来ました。
「蛙ぼたもち」は嫁姑のお話。姑とぼたもち(蛙)の会話がなかなかで会場からはクスクス笑いが。あちこちの角から逃げ出してしまったはずの蛙がまだ重箱に残っている??? 最後のピョーンで歓声が起こりました。楽しかった!!
「歌うふくろ」はお話の半分近くが女の子の歌で占められています。語り手がメロディーを作り歌い上げました。少しあわれなお話ですが、最後はおかあさんの機転で救われ、温かいベッドで休むことが出来ました、聞き手もホッと安らぎました。
「茂吉のねこ」 先日亡くなられた松谷みよ子さんは生活の隅々から現代の怪談話も集めておられました。この話は伝説を元にした百鬼夜行絵巻に通じるようなおはなしです。ばけものたちの下働きをして仲間になることを望んでいたのに、結局は「おら、茂吉好きだもの」と、ばけものになりきれなかった可愛い三毛ねこのお話。
「注文の多い料理店」はみなさんが良く知っているおはなしですが、淡々とした語りにどんどん引き込まれていきました。
「風がどうと吹いてきて…」異界に入った都会から来た若い紳士二人は、廊下、扉、廊下と山猫軒の奥深くまで注文に従いながら進んでいきますが、二人の一人合点な解釈に聴き手から笑いがあがります。鳥や獣の命を奪いに来た都会人を懲らしめる山猫たちの仕返しでした。「風がどうと吹いてきて…」みな現実に戻りましたが、二人の顔はずっと紙屑のようにしわくちゃのままでした。
☆プログラム☆
こぶ取りじい -日本の昔話―
「ももたろう」(日本の昔話 3) おざわとしお再話 赤羽末吉画 福音館書店
チム・ラビットみつばちをかう -創作―
「チム・ラビットのおともだち」 A・アトリー作 石井桃子訳 中川宗弥画 童心社
杜子春 -創作―
「杜子春・トロッコ・魔術 -芥川龍之介短編集―」(青い鳥文庫) 芥川龍之介著 講談社
休憩
蛙ぼたもち -日本の昔話―
「おはなしおばさんの小道具」 藤田浩子著 一声社
歌うふくろ -スペインの昔話―
「おはなしのろうそく 6」 木村規子訳 東京子ども図書館編・刊
茂吉のねこ -日本の昔話―
「松谷みよ子全集 6」 松谷みよ子著 講談社
注文の多い料理店 -創作―
「風の又三郎」(宮沢賢治童話集 1) 春日部たすく画 岩波書店