中央図書館 大人のためのおはなし会 第56回 2024年10月
2024年10月18日(金)に「大人のためのおはなし会」が、世田谷区立中央図書館「おはなしのへや」で開かれました。雨が降り出しそうな空模様でしたが、6名のお客様がいらしてくださいました。
当日は、おはなしを始める前に「ぐりとぐら」のシリーズなどで知られる絵本作家中川李枝子さんの訃報に寄せて、旧知の仲である代表のマイヤース景子が哀悼の言葉と生前の思い出などを語りました。
そして中川李枝子さんを追悼して、小川陽子が中川李枝子さんの詩「おでかけくまさん」の手遊び歌を熊のパペットを使って皆様に披露させていただきました。
中川李枝子さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
一つ目のおはなしは「さるかに」でした。とてもポピュラーな日本の昔話です。
ずる賢くていじわるな猿に母蟹を殺された子蟹たちが、栗・蜂・べたくそ・大きな臼の協力を得て猿に仕返しします。最後に猿は殺されてしまいますが因果応報ですね。語り手のゆっくりではっきりとした語り口に、おはなしの情景がくっきりと浮かんできました。母蟹を殺された子蟹たちの泣き声に胸が痛みましたが、みんなで仕返しをする場面は畳み掛けるようで臨場感がありました。
二つめのおはなしは、これも日本の昔話で「粟福と米福」でした。
継母は実の娘の米福ばかりかわいがり、継娘の粟福はいつもいじめられています。ある日、粟福は山で会ったおばあさんに親切にしたら何でも出てくる宝のひょうたんをもらいます。粟福はそのひょうたんを賢く使いますが、最後は米福との歌比べで美しい歌を詠み、隣村の庄屋に嫁ぎました。一方継母と米福は田んぼに落ちてタニシになってしまいました。静かで丁寧な語りと、クライマックスに粟福と米福の詠んだ歌があまりにも対照的だったのが印象的でした。粟福が幸せになってほっとしました
三つめのおはなしはフランスの昔話で「ふくろにいれられたおとこのこ」でした。
このおはなしは2017年に福音館書店の月刊絵本「こどものとも」創刊60周年の記念イベントが玉川高島屋で開催された際に、おはなしたまごの会が「こどものとも」の中から12話ほどおはなしを語ったうちのひとつです。
知恵のある男の子、ピトシャン・ピトショ(名前から面白いですね!)が食べたイチジクが育って大きな木になりますが、そこに来た鬼に袋に入れられて鬼の家に連れ去られてしまいます。ピトシャン・ピトショは熱い湯がたぎる大きな鍋に入れられそうになりますが、機転をきかせて逆に鬼をやっつけてしまいました。明るくにこやかな語りでピトシャン・ピトショの活躍を楽しく聞きました。
四つめのおはなしは日本の昔話で「えすがたあねさま」でした。
辛夷の花のように美しいあねさまのことが大好きなあにさんが、あねさまの似顔絵を毎日眺めては畑仕事に精を出していたのに、ある日その似顔絵を偶然手に入れたお城の殿様にあねさまを連れ去られてしまいます。数年後、あにさんが栗売りに扮してお城にやってきて、最後には殿様をお城から追い出して二人でそのお城で幸せに暮らすというハッピーエンドのおはなしでした。強弱や緩急のはっきりした語りで、登場人物の会話や栗売りの歌うような口上が明るく軽快で、鍬や機織りや風などの擬音もリズミカルでとても楽しいおはなしでした。
最後のおはなしはイタリアの昔話で「リンゴ娘ニーナ」でした。
貧乏なお父さんにリンゴと一緒にカゴに入れられお城に行ったニーナはお妃様に気に入られます。長じて仕事ができるので他の召し使いたちに妬まれ、お妃様に無理難題を言いつけられますが、その度に衣装部屋のタンスから美しい若者が出てきて助けてくれます。最後にはその美しい若者の手助けにより、妖精モルガンの足の下にあるクッションをお城に持ち帰ることができ、タンスの若者もモルガンの魔法が解けて自由になり、しかも彼は昔行方不明になった王子様だったのでお妃様も大喜びでした。そしてニーナと王子様は結婚し幸せに暮らしました。壮大なハッピーエンドにこちらまで幸せな気持ちになりました。
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