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中央図書館「大人のためのおはなし会第52回」2024年2月

 2024年2月16日(金)は、世田谷区立中央図書館「大人のためのおはなし会」でした。

 今回は、「大人のためのおはなし会」前日まで季節外れの暖かな日々が続き、テーマの「寒くなるおはなし」がそぐわないのではと心配していましたが、当日は、幸か不幸か真冬並みの寒さがぶり返し、テーマがぴったりの日になりました。そんな中、世田谷区外からのお客さまも駆けつけてくださり、和やかな嬉しい会になりました。

 

 「雪娘」は、東北地方の方言で語られました。雪の寒い晩に小さな女の子が、おじいさんおばあさんの家を訪ねて来ました。子どものいないおじいさんおばあさんは、その子を我が子のように世話をして可愛がりました。お風呂を勧めると、湯船の中に、真っ赤な櫛と雪の塊が浮いていたのでした。おじいさんおばあさんの慈しみの優しさと女の愛くるしさが心に残りました。

 「山姥の贈り物」は、奥多摩の小河内村に伝わる良い「山姥」のおはなし。小河内村は、今はダムの下に沈んでしまいました。

 寒い寒い日に、「お産のためのぼろ切れが欲しい」とおじいさんのところへ山姥が訪ねて来ます。おじいさんはぼろ切れを与え、帰ろうとする山姥に納屋でお産を勧めました。一年後、山姥は、二人の娘を連れておじいさんを訪ね、木槌を渡して山へもどって行きました。おじいさんが病に倒れた時、木槌を振ると白い粉が出て、それを飲むと、おじいさんの病気は治り、その後も幸せに暮らしたそうです。東京弁で語られた良い山姥のおはなしは、寒い時期のお産を通して、おじいさんと山姥の暖かな心の交流が伝わりました。

 「おそばのくきはなぜあかい」は、橋のない川で、麦とお蕎麦におじいさんが向こう岸まで渡して欲しいと頼みます。麦は断り、お蕎麦はおじいさんをおんぶして冷たい川を腰まで水につかり何とか渡りきりました。おじいさんは穀物の神で、麦には厳しい冬に、お蕎麦には暖かな春に育つように言い渡しました。お蕎麦の茎は、その時の水の冷たさで赤いのです。

 みんなの良く知っているおはなしですが、石井桃子の美しい日本語を心地良い語りで聞くと、おはなしのそれぞれの場面が心に残り、お蕎麦の赤い茎を麦秋の頃に観に行ってみたいと思ったほどでした。

 「鳥取の蒲団」は、ラフカディオ・ハーンが鳥取を旅した折、宿の女中から聞いた話を再話したものでした。

 ある宿屋の初めての客が、掛け布団から声がすると宿から逃げ出し、二人目の客も同じだったので、宿屋の主人がことの顛末を探すと、貧しい兄弟が両親を亡くし、家も追い出され、雪の下で永の眠りに就いたのでした。兄弟が最後にくるまった掛け布団が、追い出した家主から売りに出され、古道具屋からその宿屋に売られたのでした。

 宿の主人は、その掛け布団を観音堂に寄進し、お経をあげて供養すると、その布団は声を出さなくなったのでした。兄弟たちが、互いをいたわり問う悲し気な声、「あにさん、寒かろう」、「おまえ、寒かろう」がいつまでも耳に残るお話しでした。

 「野底マーペ」は、沖縄・石垣島の伝説で、かつて琉球王朝への薩摩藩の厳しい年貢の徴収によって引き起こされた悲劇を伝えています。

 結婚を決めていたオシムニとマーペは、人寄せ(開拓のため他の島へ集団移住)のため、離れ離れに。マーペは、マラリヤに罹り、オシムニの住むかつての故郷を見たいと野底岳にたどり着いたが他の山に隠れて観ることが出来ませんでした。今でも野底岳には、そこで死したマーペの姿かたちの岩が残っているのです。

 圧政に依り、添い遂げられなかった若い二人の悲しさがひしひしと胸に溢れました。

 

テーマ:寒くなるおはなし


☆プログラム☆

 

雪娘 -日本の昔話-

「松谷みよ子の本8 昔話」 松谷みよ子著 講談社

 

山姥の贈り物 -日本の昔話-

「新しい日本の語り5  -藤原ツヂ子の語り-」

日本民話の会編著 悠書館

 

おそばのくきはなぜあかい -日本の昔話-

同名絵本 石井桃子文 初山滋え 岩波書店

 

鳥取の蒲団 -創作-

「新編日本の面影」(角川ソフィア文庫)

ラフカディオ・ハーン著 池田雅之訳

角川書店 

 

野底マーペ -沖縄・石垣島の伝説-

「沖縄県の民話」日本児童文学者協会編

 偕成社


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